1・中3の春、玲は恋をした。その相手は玲の通っている塾の先生だ。「今日から社会の担当になる、野上といいます。一年間よろしく!」
このときは、親しみのある先生だなぁって思っていただけだった。
ある塾帰りに、玲は帰り道に塾に傘を置き忘れたのに気付き、あわてて戻った。そのとき前からだれかが近付いてきた。―野上先生だった!先生は誰かを探しているように、キョロキョロとあたりを見回していた。そして私の方を見ると、こっちに走ってきて
「北村さん、傘忘れていましたよ」
と言って来た。
「…え?……あっありがとうございます。」先生は傘を渡して塾へ帰った。
そのとき玲は少しだけ心があたたかくなった。―なんだろう?この気持ちは…。
雨が降り出したので、傘をさし、走って駅のバス停に行った。