「クソッ・・・何なんだよ、全く・・・」
地面を蹴りながら呟く。バイクが消えていった方を見ながら、一人とり残された龍一は咲坂の言葉を思い出した。
(そういやもう元に戻ってんのかな・・・時間)
確認のため、龍一はその場を後にして駅に向かった。駅に着き構内に入ってはみたが、動いている人間は一人もいない。
(動いてねぇぞ・・・おい)龍一は軽く絶望してうつむいた。しかしその時・・「ピィィーーー!」
けたたましい笛の音が聞こえた。辺りを見ると、構内にいる人々がまるで何事も無かったかのように動きだしている。
(よかった・・・動ごいてる・・・)龍一は心の中からホッとした。弾みで涙が出そうになる。目を押さえていると、構内アナウンスが流れた。
「間もなく、電車が発車します。お乗りの方は・・」(やべっ、早く乗らないと・・・)
龍一は電車に飛び乗った。そして自分が座っていた座席を見つけ、ドサリと腰を下ろし窓の外を見つめた。(ああ、やっと家に帰れる。帰ったら速攻で寝たいな・・・)
龍一は帰った時のことばかり考え、疑問に思わなかった。
そう、止まった時の中で走り回っていた自分に。