「白斗(はくと)、今日一緒に遊ばねぇ?カラオケ行こうぜ。」
「わりぃ、家の事情ってヤツで今日は無理だ。」
「何だよ、付き合い悪ぃな。・・・ま、しょうがねぇか。んじゃ、またな!」
青い空の下、足早に去っていく友人の後ろ姿を見送る少年がいた。
彼は高城白斗、16歳。
全日制男子校に通う高校生だ。
家族は父母に3歳上と7歳上の兄が2人。
学校から歩いて10分の一軒家に住んでる、普通の高校生。
だったのだが
『白斗、東だ。東の寺社に急げ。』
どこからともなく聞こえてくる男の声。
友人の姿はとうに無く、目に見える範囲では自分以外の人影は無い。
そして、耳からではなく頭にダイレクトに伝わる声。
「頼むから、昼間いきなり話しかけてくるな。フツーにビビる。」
飽きれ顔になりながら誰もいない空間に話し掛ける白斗。
いや、誰もいない訳ではない。そこには確かにあるモノが存在している。白斗にしか、【力】を持つ者しか見えないモノが。
「【鬼】だろ?アイツらは夜にならないと動き出さない。それに」
白斗の眼が、声の主を捉えた。
「【鬼】は逃げやしねぇ。ヤツらの狙いは【オレ】なんだからよ。」