自信に満ちた白斗の言葉に声の主は、溜め息を漏らした。そして、ようやく視える形となって姿を現した。
「全く、お前は。そんなことを言っていたらいつか必ず殺されるぞ。」
長身の30代前後の男が白斗の目の前に立っていた。
左眼に眼帯をしていて、眉間には何かに斬られたような痕がある。
いかにも怪しいその姿は、白斗以外の人間には見えない。白斗にある【力】がその姿を捉えている。
「いきなり話し掛けられても、返答に困る。ダチとかに見られたらどーすんだよ。オレの完全独り言じゃねぇか。」
なるべく声を抑えて男に話し掛ける。端から見れば本当に独り言だ。
男は申し訳なさそうに眉を潜め、「すまん...」と静かに謝った。
風が吹き始め、白斗の背中を押す。東の風、風力は3〜5辺り。
清々しい春の1日だ。
しかし、突然白斗と眼帯の男は身をこわばらせた。
「オイ、まだバリバリ昼間だぞ・・・」
「・・・どういうことだ?」
2人は後ろを振り返り、眼を凝らした。
そこには閑静な住宅街と、外れにあるちいさな寺社が見える。
そして、夜にしか匂わないあの腐敗臭が微かに2人の鼻を刺激した。