すたすたと歩きだすあいつ。
ブーツのヒールが邪魔で、ひょこひょこしながら追いかけるあたし。
「…ほれ。」
突然、前をむいたままあいつがこっちに左手を伸ばした。
「ん?…あぁ。」
あたしが鞄を渡すと
「なんでだよ。」
って小さくつっこんでから、鞄を右手に持ち直して
「…ほれ。」
とまた手を伸ばした。
素直に…
素直に…
呪文のように唱えていたのが効いたのか
あたしの右手は自然と伸びて
あいつの左手を握った。
「冷てぇ手だな。」
そう言うとあたしの手を引いて歩き出した。
あいつはさりげない感じを装ってたけど…
あいつの横顔が
にーって笑ったのを見逃さなかった。
あの頃繋げなかった手。5年たってやっと繋げた手。
手を繋いで歩くだけのことが、こんなに幸せに思えるのは
相手があんただからだよ。
なんて言えなかったけど…
本当にそう思った。
離したくないって思った。
…あれから一年
また成人式の季節がきた。
21になったあたし達は
まだちゃんと
手を繋いでる。