太郎を見送ったあと、もう一度ミオとかいう子を見てみた。
なんかあいつだけ別世界にいるみたいだなぁとぼんやりと考えてると、貴士の目に一人のクラスメイトが映り込んできた。
その子は、美緒の斜め前の席に座っていた。
ただその子も美緒に劣らず、独特の空気を持っている。
貴士は、吸い込まれるように不思議と、またごく自然に彼女をじーっと見つめてた。
頭は少し茶色がかっていてる、そして髪型は少しそろってないおかっぱ。
毛先が外にはねていて、とても軽そうな感じだ。
顔は…よく見えないけど
色が白い。
そして俯いて本を読んでる。
何の本だろう?
貴士は、どうしてだか気になった。
なんだろう、この気持ち。
彼女はふと意識を取り戻したかのように顔を上げ、窓の外に目をやった。
彼女の席は一番窓際で彼女は外の何かをずっと見つめてる。
貴士は思わず自分の席から立ち上がり、彼女の視線の先を追った。
今度は何を見てるんだろう?
貴士はまるで子供が宝を探して探検するような気持ちになった。
…桜?
おそらくあの子は桜を見てるのだ。穏やかな春の風に揺れる桜を。