「おい!貴士!」
大声でそう呼ばれて、はっと我に返った。
「あれ!?俺、今…」
きょとんとして周りを見渡すと全員椅子に座っている。教壇には担任がいる。
これは…もしや…授業中!?
「うわっやばっ!あの…ごめんなさ」
「貴士ぃお前学級委員長に立候補かぁ!」
担任の先生は嬉しそうにがははと笑った。
「は…はい?」
意味がわからない。
「よし!今年の一年は威勢があっていいな!女子はもう谷口美緒!お前で決まりな!」
クラス中から拍手が沸き起こる。
「男子は太郎と貴士…どっちかだ」
「いや、先生待ってください!俺」
「貴士…まさかお前勝負が恐いのか?男は逃げちゃだめだぞ」
ちげぇぇぇぇ!
待てー待て待て待て!
「よし、ここは多数決な!いいかぁ?」
は〜〜い、とクラス中がやる気のない返事をした。
待ってくれーー!
貴士は心の中でそう叫んだ。
「で?言い訳は?」
太郎の低い声が前から聞こえる。なんと、32対5で俺が圧勝してしまったのだ。もちろん俺は太郎に票を入れたのに。
「太郎、違うんだ」
「何が」
太郎はすかさず返事を返す。
「だから…さぁ」
ああ…最悪だ。恥ずかしくて言えねぇ。あの子に見とれてた、なんて。