どうしても泣きやめなくて、あきの部屋を後にした。
空を見上げると、いつかみたいにキラキラと星が一面に揺れていた。
家につくと、誰かが来ている様子だった。男物の靴が玄関にあった。
「ただいま。」
声をかけても、いつもの亮ちゃんのおかえり、が返ってこない。
リビングの扉を開けると、亮ちゃんと哲ちゃんがテーブルをはさんで向かい合って座っていた。会話は無い。
どちらも私にゆっくり視線を向けた。
「よく平気な顔してられるな。」
始めに口を開いたのは哲ちゃんだった。
あの人懐こい哲ちゃんからは想像出来ない様な怒りの込められた声に、私は一瞬ビクッとする。
私の様子など無視して哲ちゃんが続けた。
「浮気して、色んな人傷つけて、騙して、どうしてそんな平気な顔してられるんだよ!」
バンッとテーブルを哲ちゃんが拳で叩く。
亮ちゃんは、何も言わない。
「全部加菜に聞いた!
よりにもよって何で戸川なんだよ!何で亮ちゃん大事にしないんだよ!
どんな気分なんだ?答えろよ!」
哲ちゃんは怒鳴りながら泣いていた。
きっと加菜が哲ちゃんと私が一緒にいた所を見て、色々聞いたのだろう。
加菜が私が結婚している事を知っていた事に納得した。
そして、哲ちゃんが好きな人は加菜なのだろう。
いつか、亮ちゃんに全てを知られてしまう事は予想していた。
でも、私は余りにもたくさんの人の気持ちを踏みにじっていた。
「黙ってないで何とか言えよ!」
哲ちゃんの叫び声がした。
私は、目を閉じて覚悟を決めた。
答えはたった一つしかないような気がしていた。
『罪には罰』を―――。