どうして、こんな事になってしまったんだろう。
暫く私は座りこんだ状態のままでいた。
ガチャッ―――。
玄関の扉が開く音がした。
「…唯ちゃん。」
亮ちゃんが息を切らしながら私の前に目線を合わせる様にしゃがみこんだ。
「何があったんだよ。哲ちゃんはどこに行ったんだ?」
と言いながら亮ちゃんは俯いたままの私の顔を覗きこんだ。
何も言えないまま、私は小さく首を横にふる。
一度ため息をついてから、亮ちゃんは私の顔の頬を両手でグイッと上げた。
亮ちゃんの目は哀しそうで、それでいてとても優しかった。
「何があったか、ちゃんと言うんだ。」
「か…加菜さんが、哲ちゃんの好きな人が事故に合ったって…。」
上手く説明出来ない、少ない私の言葉に亮ちゃんはこう言った。
「行くぞ。」
その言葉にまた私は俯いて、ただ恐くて首を横にふった。
「行くんだ。」
亮ちゃんは私を支えるように立たせた。
「今行かなかったら、唯ちゃんが後悔する事になるんだ。」
『後悔する』という言葉に反応して顔を上げると、亮ちゃんは全部わかってるよ、と言いたげな顔をしていた。
「うん、行く。」
やっとの思いでそれだけ私が返事をする。
「よし。」
そう言って亮ちゃんは少し笑って、私の頭をポンポンと撫でた。