ああ
新八は喉の奥へ唾をおくった。経験している新八にとって話を聞くだけでも、寒気に似た様なものがやってくる。
「それで奴は何と?」
「えぇと、『見つけたようだね』とかなんとか。」
「他には?」
沖田は笑って頭をふった。
「何のこったろうな?そういや、あの化物なんだって俺になんか。それに前んときだって今だって、一体何が目的なんだろうな?」
なぁ?
新八がそう言って土方を見ると、思案顔で少し目が吊り上がっている。
おいおい
小突かれてやっと気付いた。
「うむ?」
考え込むといつもこうなる。
いや
頭を振って腕組みした。
「今それを思案してたんだがな、化物は俺達を利用してやがる。単に食うだけなら、もうとっくにやってる。」
それを
「しねぇのは、何かもっと裏がある。」
「裏ってぇと?」
少し間の抜けた顔で新八が聴くと土方の顔が
ばか
と言った。
「それが分かりゃ苦労はねぇよ。」
「そうか、あんたに分からんものが俺にわかるはずねぇな。」
と妙な納得をすると、土方の顔がまた
ばか
となった。
二人のやりとりを見てくすくす笑っていた沖田が、
ハタ
と手を打った。
「それよりこれからどうするんです?」
あ
と二人の顔が一点に集まった。
「え?!」
一番の問題がそこにある。
「どうする?」
「どうするもなにも、まさか女を連れて帰れまい。」
かといって、
「放っておけば奴に皆殺しだ。まさかそれはできねぇよ。」
考えてもどうどう巡りで、先に進めない。二人とも頭を抱えてしまう始末。
そのうちに日が暮れてきた。
あの
しびれを切らせたみきが恐る恐る口を開いた。
「あの、女のままが駄目でしたら、男になったら駄目ですか?」
え!?
と三人の顔がいっぺんに振り向いた。暫く沈黙があって、やがて新八と沖田が同時に笑いだした。
「そりゃいい。」
「そいつぁいい。」
と声をそろえた。
しかし、土方だけは苦い顔をした。
「無理だ。」
それもそのはず、どう頑張っても隠し通せるとは思えない。おまけに本人は気付いていないだろうが、女としての色香がありすぎる程に出ている。
「では、このまま私をここへ放っておいて、あの気味の悪い男に皆で殺されますか?」
今度は恐じない。何処にそんな勇気があるのか、土方の
ギラ
と光る眼を見ても、びくともしない。