「神は、五名を連れて先行してくれ。 隠密行動が取れるやつら…田島の組がいいな。
裏手の谷から侵入をして、女を人質に取れ。
奴らはそれで身動きがとれなくなる」
鬼島義行の指示を受け、神一久が席を立つ。
「劉は二十名を率いて先陣をやって貰う。 神が動きやすい様に、派手に攻撃を仕掛けてくれればいい」
鬼島の言葉に、鋭い目で頷く劉源治。
「井田は木崎とジェフの組を両翼に配して、劉の援護と伏兵に目を配ってくれ」
おおよその差配を済ませると鬼島は、襲撃先の詳細な地図に目を落とす。
敵方のつもりになって、攻防の予想をするためである。
「ふん、罠を仕掛けるとすれば……ここしかないな」
鬼島は、集落の前方を囲む森を指差していた。
「あいつ、人の好さそうな顔してエグイ事考えるよなーっ」
樹上からリンの声が降ってくる。
小柄で身軽なリンは、罠の設置にいそしんでいる所であった。
地面スレスレに張った縄に足をかけると、頭上から竹槍の雨が降るという訳である。
森には様々な仕掛けや落し穴が設けられ、敵の気勢を奪う手段がこうじられている。
「晋のやつ、楠正成の子孫じゃないのか?」
こぼすリンに、村山剛は明るい笑いを返した。