『そう言えばあんたの母親ってさぁ、夜、スナックで働いてんじゃん?昼は売れない小さな弁当屋でのパート。夜は寂れた路地裏の流行らないスナックで酔っ払いの相手。あんたの母親も気の毒ねぇ〜。』
ユカが得意気にこう言った。
あたしの怒りは頂点に達していた。
怒りで震える体を必死で抑えていたー。
そんなあたしの怒りを煽るかの様にユカがこう捲くし立てたー。
『あたしん家はさぁ、お父さんは一流企業の会社役員。お母さんも病院で看護師してるから、生活は割とリッチなんだよね〜。あの財布に入ってたお金だって大した金額じゃないしさ。ここであたしに土下座して誤ってくれたら、許してやってもいいわよ、奈央。』
『‥‥‥。』
あたしの手には拳が握られていた。
ギュッと握った拳に思わず力が入るー。
殴ってやりたい‥。
今すぐコイツの顔を‥‥。
殴ってやりたい!!
頂点に達した怒りをなんとか鎮めようと、あたしは自分自身にこう言い聞かせたんだー。
もう二度とお母さんを悲しませる様な事はしたくないー。
もう二度とお母さんを泣かせるもんかー。
『どうするの?!奈央。土下座するの?!しないの?!どっちよ?!』
ユカはあたしが言い返さないのをいいことに、すっかり女王様気取りだったー。