次の日の朝ー。
教室ではユカの財布が無くなった話題で持ち切りだった。
『でね、でね‥。奈央がユカの胸ぐら掴んで凄い剣幕で怒鳴ったのよ!!』
クラス一お喋りなサチヨが、昨日のあたしとユカのやりとりを、得意気に話していたー。
サチヨは事の一部始終をあたしとユカの側でずっと見ていたからね。
『へぇー。秋田谷は身長160以上はあるし、木下は155あるかないかだろ?!‥よく胸ぐらなんて掴めたもんだよな?!』
サチヨの話に、クラスの中心人物で、かなりワルの北岡がいち早く反応したー。
『んもぅー‥。北岡ってば、その場に居なきゃ分からないわよ!!奈央のキレ方はハンパじゃなかったわよ!!』
サチヨの毒舌に益々拍車がかかるー。
北岡がサチヨの話に夢中になっている為、クラスの連中に口を挟む者は居なかったー。
何故なら、北岡は入学して一カ月や否や、我が校始まって以来の問題児という存在になっていたからだー。
北岡はクラスの連中に恐れられていたのだー。
『友情ごっこもいいけどよ、人間生まれて来るのも一人。死ぬ時も一人だってよ。ま、一人を集団で集中攻撃して苛めるヤツなんざ来世に生まれ変わる事も出来ないんだろうがな。』
北岡はこう言うと、席に一人で座っていたあたしの方をちらっと見たー。
北岡 聖人ー。
コイツは見かけの割に、案外良い奴なのかも知れないー。
あたしはそう思ったー。