航宙機動部隊前史・33

まっかつ  2008-01-11投稿
閲覧数[491] 良い投票[0] 悪い投票[0]

だがこれは当然、大勢の市民達の反感を招いた。
結論から言えば、宙際連合は傲り高振り、折角得た勝利を活かし切れなかったのだ。
為に、本来なら三星紀は保てた筈の彼等の覇権は、僅か五0年で失われる事となってしまったと、しばしば評される様になる。

どう考えても禁忌ずくめの宗教的牢獄を拒んだ市民達は、ほぼ独力で大々的な遠宇宙の恒星への移民を開始し、その行く先々で自由の国を打ち樹て出した。
十億人単位の《ピルグリム=ファーザーズ》達は既存の権威に抵抗する基盤を用意し、又その為に旧航宙遊牧民族の科学技術や文化・人材を積極的に受け入れた。
こうして中央域から平均して半径三00光年離れた最辺境が俄かにフロンティアと化し、やがてここから誕生した幾つもの新興国群が次なる時代を創る主役となって行く。

凡そ一星紀に渡って宙際連合中枢を覆ったグランドパージは、逆に彼等の集権体制の権威と信用に致命傷を与える結果となってしまった。
そして、最辺境に形成された新興国群との妥協を与儀なくされるまでに弱まっていた。
ここに、文明保守と旧航宙遊牧民族系の革新との二つの要素の融合が始まり、ようやく人類宇宙は新しい―あるいは本来あるべき―時代を迎えたのだ。

ヘレニズムの時代だ。
権力機能を後退させた宙際連合は、各宙域自治制度を抜本的に改革する事によって、変化を乗り切ろうとした。
宇道・宙州・大中小管轄公宙区・特殊宙域等に代表される宇宙の区画割りであり、それぞれの加盟勢力への大幅な自治権譲与・承認がそれに続いた。
更に、最辺境の新興国群では新しい動きが始まっていた。
一つの星系を統治する政体が、人工植民体や船団国家を傘下に収めてそれまでにないタイプの勢力《星邦》を造り、しばらくすると、その星邦同士が合わさって、或いは一つの星邦が他の星邦を制圧して《宙邦》と呼ばれる強大な恒星間国家さえ、産まれ始めたのだ。
都市国家から領域国家化への胎動は、より強大な政府・軍・治安機構・経済力・産業育成・教育システム・更には独自の文化・価値体系を築き上げる莫大な需要を喚起したし、またそれだけの物を手に入れるに充分な力を彼等に与えたのだった。

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 まっかつ 」さんの小説

もっと見る

SFの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ