あきから聞いた病院に着くまでのタクシーの中、私と亮ちゃんはどちら共必要最小限の言葉以外は無言だった。
病院に着く。
「唯ちゃんは先に行きな。」
その亮ちゃんの言葉に私は甘えて走り出した。
正面の入り口のすぐ横の救急の入り口をくぐる。受け付けを越えると真っ直ぐに続いている長い廊下の途中にポツンと茶色い長椅子が見えた。その奥には手術室と思われる扉がひっそりと『手術中』のランプを赤々とただ照らしている。
その扉の前で哲ちゃんはうずくまり、あきは白い壁にもたれて立っていた。
私の足音に気付き、あきが私の方へ視線を向けた。
哲ちゃんは姿勢をかえる事も、視線を向ける事もしなかった。
「事故って…何があったの?」
言いながら私は呼吸を落ち着かせるようにした。
「あの後、加菜は逃げるのに夢中で交差点で信号に気付かずに飛び出して車にひかれてしまったらしい…。
傷の手当てに来てみたら、加菜が丁度運ばれてきたんだ。」
あきは淡々と、感情を交えないように話した。
「………の……だろ……。」
私とあきの後ろから哲ちゃんの声が突き上げる様に大きくなってくる。
「お前らのせいだろ!!!!」
二度目はハッキリと、私とあきにぶつける様に哲ちゃんは叫んだ。
と、同時にドンッという激しく鈍い音が重なる。
哲ちゃんは鋭く睨み付けながら、あきの着ていたシャツの襟を掴みあげて壁にあきごと叩きつけていた。
あきは何も抵抗しようともしていなかった。
「哲ちゃん、やめてっ!
あきは悪くないっ!」
咄嗟に私は言う。
哲ちゃんが私を睨み付ける。
その時。
「哲!何やってんだよ!!」