「大ちゃんの将来の夢って何?やっぱピアニストになること?」
「なんだろうなぁ…。わからね。明日までに考えておくわ。じゃあな。」
これが彼と交わした最後の会話になるとは誰が知っていただろうか・・・・。
あたしは都立高校3年の木下弥生。あたしには2年の時から付き合ってる同級生の會田大樹という彼がいる。
話した事もなかった2人は偶然の出来事からしだいに仲が深まっていった。
それはたまたま忘れ物をしたあたしは放課後1人で忘れ物を取りに戻った。その時、音楽室からピアノの音がするので誰が弾いているのか見に行った。
そこで大ちゃんがピアノを弾いていた。あたしは知らない間に聴き入ってしまい扉の隙間から覗いていたはずが中に入って聴いていた。
「下手くそな演奏だけど聴いてくれてありがとう。」
「ううん。凄い良かった。あたしも少しピアノやってるんだけど全然弾けなくて。」
「そうなんだ。今、ちょっとだけ弾いてみてよ!聴いてみたいなぁ君のピアノ。」
「最近練習してないから今度ちゃんと練習してくるね。」
「わかった。楽しみにしてるよ。オレは會田大樹よろしくね。」
「あたしは木下弥生。今度また會田くんのピアノ聴かしてね。」
「良いよ。それじゃあ、帰り道気を付けてね。」
この日はこれで終わってしまった。
でも、あたしはあの時の音色が忘れる事が出来なくて大ちゃんのピアノを聴きに行く日々が続いた。大ちゃんもあたしの演奏を気に入ってくれ2人はピアノを通して仲良くなっていった。
2年の終わりも近づいた頃に大ちゃんはあたしに好きだと告白してくれた。
あたしは嬉しかった。その日から2人の距離は一気に近づいた。
進級して3年になり大ちゃんのピアノは凄く上達していた。音楽の先生からも音大に行くことも進められていた。
進路を考える時期が来たのであたしは大ちゃんに聞いてみた。
「大ちゃんの将来の夢って何?やっぱピアニストになること?」
「なんだろうなぁ…。わからね。明日までに考えておくわ。じゃあな。」
大ちゃんはそう言い残してピアノのレッスンに行ってしまった。