あたしは次の日学校で信じられない言葉を聞いた。
「昨日、1組の會田が交通事故で亡くなったそうだ。」
担任の先生がそう言った。
あたしの頭は真っ白になった。
自然とあたしの足は教室を出て大ちゃんの家へと向かっていた。
家には大ちゃんの横たわる布団の周りに家族が涙を浮かべ座っていた。
あたしはそれを見ても信じられなかった。いや、信じたくなかったのだろう…。あたしは涙が出なかった。
大ちゃんのお母さんの話によるとレッスンに行く途中でボールをとるため道路に飛び出した子供が車にひかれそうなのをかばったらしい。
あたしはだんだんと我を取り戻し大ちゃんの死を受け止め始めた。
知らぬ間に涙も出ていた。
その時、大ちゃんのお母さんがあたしに向かってこう言った。
「大樹ったら『オレはオレの音色でこの世界を驚かせてやる』ってずっと言ってたの。でも、その音色も鳴らなくなっちゃったの……」
お母さんは肩を落として泣き出した。
時間も過ぎ大ちゃんのお通夜もお葬式も済んだ。
あたしは大ちゃんの楽譜をもらった。
そうあたしが大ちゃんの代わりに大ちゃんの残した音色とあたしの音色組み合わせてこの世界を驚かせてやろうと決めた。
それからあたしはピアノも勉強も一生懸命頑張り音大に入り、世界に羽ばたくためウィーンに留学をして、今では世界各国で活躍するピアニストになった。
あたしはどこへ行こうとも大ちゃんの楽譜だけは持っていく事にしている。
今、あたしが弾いている大ちゃんとあたしの2人の音色を世界中の人に聴いてほしい。