声のした方へ全員が振り向くと、亮ちゃんが私を通りすぎ、真っ直ぐにあきとあきの胸ぐらに掴みかかったままの哲ちゃんの側に近寄った。
「哲…落ち着けよ。」
そう言って哲ちゃんの腕をつかんだ亮ちゃんの顔は、今まで一度も見た事の無い程真剣だった。
「誰のせいでもないだろ。」
亮ちゃんが、哲ちゃん、あき、私の順番でそれぞれを見回した。
「亮ちゃんは何もわかって無いのかよ?」
あきに掴みかかる事を諦めた哲ちゃんが力無く呟いた。
ただ少しの沈黙の後に亮ちゃんが答えた。
「自分なりには理解してるつもりだよ。
今目の前にある現実を受け止めて許せる自信は正直無いけどな…。」
ふと亮ちゃんと目線が合う。
胸の奥が苦しさを混ぜながらズキンと痛んだ。
カチンッ――――。
その時、『手術中』のランプが消えて正面の扉が開いた。
手術室の中からは、医者と思われる男性がマスクをはずしながら出てきた。
哲ちゃんがすぐに駆け寄る。
「外傷が少しひどく骨折も何ヵ所かありましたが………………命に別状はありません。
しばらくすれば麻酔からじきに覚めるでしょう。
入院もしなくてはならないですが、すぐに退院出来る様になりますよ。」
医者は柔らかな表情をしながらそう言ってどこかに行ってしまった。
と、同時に扉がまた開き、眠ったままの加菜が運ばれてきた。
眠ったままの加菜は、私に見せた表情とはまるで別人で、長い睫毛に透き通った白い肌は本当に美しいと感じさせた。
そして、その瞬間。
その『美しさ』が私に『答え』を決断させてくれた。