加菜が事故にあった日から3日が過ぎた。
今日は日曜だった。
あの日はあれから、哲ちゃんは眠ったままの加菜から離れようとせずに付き添ったままでいたらしい。
あきは医者達と何か会話を交わしてから、家に帰ったらしい。
そして、亮ちゃんは私と一緒に一旦家へ戻り、簡単に荷造りをしてから実家へ帰る、と言って出ていった。
「出てくなら私が…。」
と私は言ったが、実家の方が会社に近いから、とあっさり断られた。
私はこの3日間、今までとなるべく変わらない様に過ごした。
いつもの様に、朝起きてコーヒーを飲んだ。
いつもの様に、事務的に淡々と仕事もこなした。
いつもの様に、時々真弓が吸っている煙草の煙を眺めた。
いつもの様に、見慣れた風景を潜り抜けて会社から家まで帰った。
いつもの様に。
いつもの様に。
自分がしてしまった過ちを無かった事にしたかった訳じゃなく、自分がしてしまった過ちで失った何かを忘れない様に感じる為に。
私は加菜に会うために病院へ向かった。
途中の花屋で、スイセンの花をメインに花束を作ってもらった。
コンコン、と病室の扉をノックすると、中からはい、と聞こえた。
緊張しながらも扉を開ける。
「こんにちは。…突然ごめんなさい。」
加菜は突然の見舞いの人物が誰なのかを理解すると、微笑みながらこう言った。
「いつかの逆ね。」