「目を開けて…」
心の中に直接響く様な神秘的な声が聞こえ、少年は目を開いた。
「わぁ…」
手の平の上にあるソレを見て少年の顔はほころび、想わず歓声を上げた。
手の平には先程少年が見ていたスポーツカーのミニカーが置いてあった。
そして…
「あれ…お兄さんは？」
最早スポーツカーも先程の天使も彼の前から姿を消していた。
地面に銀色の羽根だけを残して。
＊
「現在、急速に発達した低気圧の影響で自治区全域で吹雪となっており……海上も大時化で……現在本州からの交通網全てが寸断されています…」
カーラジオは北海道全域に大雪をもたらしている低気圧の情報を淡々と流している。
そしてラジオの言う通り、ここギルク山の麓の街…富良里でも吹雪が容赦なく吹き付けていた。
「はい…わかりました…確かに無理ですよね…」
ジュリアはそう言うと電話を切った。
「良い知らせよ。今日の救助活動は中止になったわ。」
ジュリアの言葉を聞いて一同は胸を撫で下ろした。
「良かったぁ…命拾いしましたよ。まぁ研究員の人達は気の毒だけど。」
「お前沖縄生まれだからな…
まぁ俺もこんな吹雪の中行軍するのは真っ平だけど。」
龍華の言葉の通り力也は沖縄に生まれ、力也が10歳の時に東日本に亡命したという過去を持つ。
もう10年以上東京で暮らしているがやはり島人（しまんちゅ）の血を引いているせいなのか寒さには弱い。
「あと悪い知らせよ…
ギルク山中のブレンディーのキメラ研究所からキメラが逃げ出したらしいわ。」
「キメラ！？
まじすか…厄介な事になりましたね…
あのデブ社長は一体何をやってるんだか…」
キメラ逃亡とブレンディーという言葉を聞いて龍華は不快感を露にした。
「キメラかぁ…俺は10年執行部をやってるが戦った事は一度もないな…」
「私も…大体魔獣狩り自体そんなにやった事無いし。」
オロマとジュリアは10年のキャリアを持つベテランだが、彼等でさえキメラを相手にした所か見た事すら無かった。
そしてそんな二人の言葉に龍華と力也は不安を募らせるのらせた。
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