赤い糸

きらきら  2008-01-12投稿
閲覧数[694] 良い投票[0] 悪い投票[0]

「彼とはいわゆる赤い糸で結ばれています」と占い師に言われたのはいつのことだったか…。あなたは「信じる」と言っていたけど,私は信じなかった。だってあなたにも私にも家族がある。心通えない相手との冷めきった生活の中,癒しを求めて二人は出会った。それでもあなたも私も子供たちは可愛かった。だから家族をやめることはないし,やめてもらうことなど望まなかった。ただ癒しと安らぎを求め,仕事と家庭をやりくりし,わずかな時間ではあったけれど毎週の様に愛し合った。
そんな関係が3年ほど続いた時,あなたは他県に転勤になり,私たちは以前のように頻繁に会えなくなった。私はあなたとの関係を何度かやめようとした。家族に対して罪悪感がないわけではなかったし,思うように会えないなんて意味がない。だけどできなかった…。あなたはまるで私との糸が切れないように,メールや時間をくれた。「君がこの世に存在していることだけで生きていける」「おじいちゃんとおばあちゃんになったら一緒にいよう」
出会ってから15年。最近はメールもあまり来なくなっていた。私もそれを特に気にすることなく過ごしていた。子供たちは独立し,夫は3年前に他界した。
ある日,あなたから手紙が届いた。初めての手紙。そこには「ずっと待っていた。君を迎えにいく。あの場所で待ち合わせしよう」との言葉と婚姻届。場所は書いていなかったけどその必要はない。いつも待ち合わせた場所に,私は向かっていた。髪も顔も身体もあの頃のようではないけど,あの人は変わらず優しく強く抱き締めてくれるはず。あの頃のようにセブンスターとコーヒーを買って,赤い糸の片端を抱いてあなたを待つ。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 きらきら 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ