「俺がメットを奴等に投げつけた瞬間、バイクに飛び乗れ。」
彼女の耳元で囁く。囲まれる前に事を済まさねば。
俺はエンジンを駆けたまま、バイクをすぐ背後にするようにして、バイクを降りた。
「彼女嫌がってるようだし、勘弁してもらえませんか?」
「なんだ、お前ヤンのか?殺すぞ?」
(どこかで聞いたセリフ。他になんかねぇのか?)
「いやいや、そんなつもりは、ねぇっ…!よっ!!」
俺は被っていたメットを外し、投げつけた!
彼女はその瞬間バイク後部座席に乗り付け、俺も奴等が身を引いた瞬間にバイクに飛び乗り、急いで走り出した。
―。
途中、お巡りさんにお世話にならず、無事に自宅のアパートへ着いた。
エンジンを止め、2人とも単車から降りた。
そういえば、『浜口アスミ』は今現在、短期間の渡米歌修行のため、国内にはいないはず。それがなんでこの茨城県に!冷静になればおかしな話だ。
「アスミさん、もう大丈夫だから、マネージャーに連絡して、自宅へ戻りなよ」
すると彼女は俺の目の前まで顔を引き寄せ、こう言い放った。
「なんですぐにオレのこと助けに来ねぇんだよ!バカ!」
予期せぬセリフに俺は思わず絶句する。
(えぇっ!?助けてもらったのにお礼は!?)
目鼻立ちのはっきりしたかわいらしい顔の、どの口からこんな言葉が!
続けて彼女が、
「女の子が困ってたら、すぐに助けるのが男の役目だろ!お前、オレが困ってたの見てたよな!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!まあ見てたけど…、でもさ…、」
「でもも何もねぇよ!オレ疲れてんだから早く家へ入れろ!」
もう俺は何がなんだか意味が分からん。
彼女に圧倒され言われるがまま俺は彼女を部屋へ案内した。
う〜ん、この流れおかしいだろ!