翔にドラムを教えるのに乗り気じゃなかったのには理由がある。 といっても自分でもそれが理由になるのか分からない。 俺の親父はあるロックバンドのドラマーだった、友達は「お前の親父すげぇじゃん！」とか言ってたけど俺から見たら親父は普通の親父で別にすごいとか思ったことはなかった。 親父のバンドは５年前に解散した。 解散してから親父は良く酒を飲むようになり何か気にくわないことがあると母を殴っていた。 それから親父は体を壊して入院している。 俺はそのときから親父と距離をおくようになりドラムからもはなれていった。 ドラムからはなれたのは親父が原因なのかどうか分からない。 ドラムをたたいていると親父を思い出すからかもしれない。とにかく親父が嫌いになった。 翔にドラムを教えて半年が過ぎた、翔は地元の小さなライブ会場でも演奏するようにもなった。 「おい！浩紀！」後ろから誰かがよんだ。 「何だよ慎吾…声でかい…」 慎吾はベースをやっている、地元のライブではけっこう活躍している。 「浩紀今年は出よう！な!?てか出ろよ！」 毎年この時期になるとバンドの勧誘がくる。 「…文化祭には出ないって去年も言っただろ…」 毎年10月に文化祭がある、約２ヶ月後だ…うちの高校は文化祭が２日間あって２日目にバンド演奏がある。 「まぁまぁまぁ〜いいじゃん！今年すげぇギターがいるんだよ！まぁ今度紹介するわ！だから考えとけよ、てか決定な！」 そういうと慎吾は俺の話しを聞かずに教室を出ていった。
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