ふり返ってみると、そこには鬼教師で有名な阿部がいた。
「松田、お前今日遅刻したな。この間といい今日といい、お前は何回遅刻すれば気が済むんだ」
「すいません…」
チッ、…まったくうるせーセンコーだ。
「お前からは反省の色が見えないな。次遅刻したときはどうなるかわかってるな!」
そう言って、阿部は去っていった。
イライラとストレスを溜めながら俺は学食に行き、いつものようにカレーを食べていた。
「すいません、そこ、空いてますか?」
俺は阿部の怒りをぶつけるかのように、
「はい、はい、どうぞ!」
と不満を露にした。
「ありがとうございます」
俺は怒りで普段の自分の性格も忘れていたため、何のためらいもなくその女の顔を見た(見ることが出来た)。
その女は少し寂しそうだった。
ようやく俺は我に返った。確かに今の声は聞き覚えのある声だ。…昨日隣に女の声とよく似ている。まさか、そうなのか?でも昨日の俺は一秒でも早くあの場から立ち去ろうとしてたのでそのときの女の顔を見ていなかった。これじゃ昨日の女かどうかわからない。
俺は女に確認したかったが、元に戻ってしまった俺は話しかけられなくなってしまった。
結局聞きたい気持ちがありながら、その場を去ってしまった。