『そう‥。盗ってないのね?!奈央。
母さんその言葉信じていいのね?!』
母さんは一言あたしにそう言うと、こう続けたー。
『先生、娘はやっていないと申しております。娘が嘘をついているのか、本当の事を言っているのかは、母親の私にはすぐに分かります。
私は娘を信じております。』
渋川は、
『う〜ん‥‥。』
と言いながら、しばらく考え込んでいたー。
ユカは、一向に進まない話の流れに、
苛立ちを隠せずにいたー。
そんな重い空気の中、母が切り出した言葉はー。
『先生、そう言う事ですので。娘はユカさんのお財布を盗っていません。
分かって頂けたでしょうか?
しかし、疑われると言う事は、娘にも
若干、注意すべき行動があったと思います。そういった点につきましては、私が親として責任を持って、家庭で指導させて頂きますので、
今回はこれでよろしいでしょうか?!
私も生活が掛かっておりますので、元の勤務先へ戻らなければなりません。
今日は娘を連れて、これで帰ります。
早退させてください。』
母は渋川にこう言うと、あたしの手を取ったー。
『では‥。失礼します。』
ガラッ―ー‐。
母とあたしは職員室を後にしたー。
帰り道ー。
母は無言だったー。
あたしの手を繋いだままー。
暖かい‥‥。
お母さんの手‥‥。
お母さん‥‥。
前にもこんな事あったよね‥‥。
ほら、去年の病院の帰り道‥‥。
お母さんてば強い‥‥。
きっと、あたしの強さはお母さん譲りなんだね‥‥。
お母さん‥‥。
信じてくれてありがとう‥‥‥。