奈央と出会えたから。<44>

麻呂  2008-01-13投稿
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『そう‥。盗ってないのね?!奈央。
母さんその言葉信じていいのね?!』


母さんは一言あたしにそう言うと、こう続けたー。


『先生、娘はやっていないと申しております。娘が嘘をついているのか、本当の事を言っているのかは、母親の私にはすぐに分かります。
私は娘を信じております。』


渋川は、


『う〜ん‥‥。』


と言いながら、しばらく考え込んでいたー。


ユカは、一向に進まない話の流れに、
苛立ちを隠せずにいたー。


そんな重い空気の中、母が切り出した言葉はー。



『先生、そう言う事ですので。娘はユカさんのお財布を盗っていません。
分かって頂けたでしょうか?
しかし、疑われると言う事は、娘にも
若干、注意すべき行動があったと思います。そういった点につきましては、私が親として責任を持って、家庭で指導させて頂きますので、
今回はこれでよろしいでしょうか?!
私も生活が掛かっておりますので、元の勤務先へ戻らなければなりません。
今日は娘を連れて、これで帰ります。
早退させてください。』


母は渋川にこう言うと、あたしの手を取ったー。


『では‥。失礼します。』


ガラッ―ー‐。


母とあたしは職員室を後にしたー。


帰り道ー。


母は無言だったー。

あたしの手を繋いだままー。



暖かい‥‥。



お母さんの手‥‥。


お母さん‥‥。



前にもこんな事あったよね‥‥。



ほら、去年の病院の帰り道‥‥。



お母さんてば強い‥‥。



きっと、あたしの強さはお母さん譲りなんだね‥‥。



お母さん‥‥。



信じてくれてありがとう‥‥‥。

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