「……晋、裏手に潜んでいる奴らが六名ほどいる」
山際晋の正面に立つ影がささやく様に言った。
集落の裏手を偵察に行った陳(ちぇん)が戻ってきたのだ。
「嫌な予感が的中か… 重ね重ねわるいけど、リンを起こしてきてくれないか? 他の連中に気付かれないようにね」
陳は、影のように去っていく。 物音ひとつ立てない。
一方こちらは神(じん)達。
「田島、さっきチラッと人影を見なかったかい?」
神一久が、田島の方を見ず、前方に視点を置いたままで尋ねる。
「大方、けものの類いでしょう。 気にする事はありませんよ、神さん」
「… それなら良いがね」
神一久には、死線をくぐってきた者に特有のカンがあった。
その勘が『気を付けろ』と囁いているようで、多少の苛立ちを覚えていた。
「リン、寝てる所をすまないな。 … どうやらテキはもうお出ましみたいなんだ」
山際晋の第一声に、林白龍(りんぱいろん)の眠気は吹っ飛んでいた。
「何イ〜、夜襲ってか?
…晋、俺が迎え撃てばいいのか?」
表情を引き締めたリンが、鋭く目を光らせる。
「いや、おそらく奴らは明日の総攻撃に連動してコトを起こすだろう。
正面の敵は陽動が目的で、真の相手はこちらの弱点を真っすぐ狙ってくる奴らだな」
晋はそう言うと、翌日の戦い方をリンに説明し始めた。