胃も満たされ、満足して車のシートへ腰を落とす。
「ホントにおいしかった!また一緒に来ようね!」
「ああ、また連れてくよ。」
俺は耳を疑わず、じきに東京へ帰る彼女なりの気配りから出たセリフだと感じとった。
「家まで送るよ。」
「ありがと。お言葉にあまえます。」
ギアシフトを入れ、アクセルを踏み込んだ。
…。
「故郷はやっばり落ち着くね。」
窓越しに外の景色を見ながら彼女が呟く。
「…俺は地元を離れた事ないからよく分からないけど、外に出たやつに聞くとそう感じるみたいだな。」
「さとるも東京に出てみたら?」
「俺ぇ!?この年になって今さら…。」
「そうだよね。ちょっと言ってみただけ。」
しばしの間、沈黙が続いたが、彼女の泊まっているホテルへ着いた。
「今日はいろいろとありがとう。ご迷惑かけました。」
「いや、俺の方こそ。刺激的な一日になってよかったよ。」
「…ところで、明日暇かな?」
「俺、休日いつもやる事ないから暇だけど…。」
「暇だけど、何っ!」
「はい!予定ありません!」
「じゃあ、私に付き合え!」
「えらそうに…。」
「なんだとぉ〜。」
2人して笑みがこぼれた。
「ただ、新しいヘルメット買わなくちゃいけないから俺にも付き合えよ。」
「大丈夫!付き合う!」
「それじゃあ、明日朝9時にまたこのマンションへ来て。それから携番交換しなきゃ。」
「そうだな。」
「…着いたら連絡する。」
「うん。」
「それではまた明日!」
「気をつけてね!」
「おう!」
彼女はまた、俺の知らない笑顔をくれた。