最初に口を開いたのは五十嵐だった。
「って事は俺達の先輩に当たる人はキャプテンだけって事っすか?!」
「まあ、そういう事になるかな。」
監督は笑いながら答えて、「あ、でも大丈夫!ちゃんと試合は成り立つ人数みたいだし、ポジションも足りないところはコンバートで補えばいいし!」
「そういう問題じゃ・・・」
五十嵐の隣にいた桃木はそうつぶやいた。
話しは30分程遡る。
「やあ、皆こんにちは。僕は古谷真(こたにまこと)。ここの監督だ。」
年は20代前半に見えすらりとした筋肉質な体型をしておりなにより美顔で、言葉もトゲというものが全然無かった。
「で、こっちがキャプテンでサード兼ピッチャーの稲垣亮介(いながきりょうすけ)君。」
「よろしく」
稲垣はにっこり微笑みながら挨拶した。
「じゃあとりあえず一年は自己紹介でも」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
氷室がその監督の言葉をさえぎった。
「ん、なんだい?」
「2、3年の先輩方は・・・」
稲垣がその話しに入ってきて
「ああ、言い忘れたね。」
「うちには俺以外に2、3年の部員はいないんだ。」
話しは戻り・・・
「・・・まあ逆をたどれば一年にもレギュラーを狙えるって事だ。なので各自しっかりと練習するよーに。」そう監督は言ったが五十嵐達の顔は暗いままだった。「あー・・・」
監督は苦笑いをしながら、
「取りあえず自己紹介でもするか・・・」
とだけ言った。