夕暮れもはや夜の闇が迫って、西の空の一部だけに朱い色を残すだけとなった頃、何やら四人組が
コソコソ\nと新徳寺を出、八木邸へ入って行った。
八木邸では、暇をもてあました男連中があちこちでごろ寝している。
その中に、一人
どっか
と座っている人物がいる。年の頃は三十路程、角ばった頬骨に、大きく裂けた口の上にはちょっと小振りなだんごっ鼻。それに、大きな顔の割に可愛らしい小さな眼がついている。その眼を細めいつも口は
に
としているから、ちょっと人好きしそうな顔だ。
土方は一人この男にそっと耳打ちして、部屋を出た。
八木邸には物置にしてある小部屋がいくつかあった。その部屋の一室で、その男と男装させたみきをあわせた。
あらかたみきの事は伝えた。
「今更一人、二人増えたところで構いやしねぇが・・、こらぁちょっと・・・。」
男は言葉を詰まらせた。色気がありすぎる。
「なぁ、ちょっといいかな、近藤さん。」
男は近藤 勇といった。新撰組局長、後の世にまで名を残す事になる男である。今はまだただの百姓親父だが。