「思い出してあげるよ。」
依頼者の男は僕の唇に強引にキスをし、シートを倒して太股を触ってきた。
僕は必死に抵抗した。
思わず大きな声で
「やめてください!」
「あの時もこんな風に抵抗したよな。」
僕はその言葉で思い出した。
「あっ、思い出した! 〇〇高校の上級生の‥」
「そうだよ。 やっと思い出したんだ? お前を高校で初めて見た、いや抱いた時からずっと忘れてはないぜ。」
僕は沈黙してしまった。
実は僕は高校の文化祭のイベント、女装コンテストで初めて女装をした。その格好がチアガールだった。結果は審査員特別賞だった。
事件はその後に起こった‥。
イベントの最中、友人は僕に着替えの制服を隠す悪戯をした。
僕が教室に戻ると制服がなくなってることに気付き探していた。
そんな時に上級生の依頼者の男に僕は襲われたのだ。
「変わらないよなぁ、お前。叔父さんが話してくれなかったから会えなかったよ。」
と、依頼者の男はニヤニヤしながら髪を撫でた。
「やめてよ。 それで何が目的なの?」
「目的? そんなの一つしかないでしょ。」
と、その男は僕の上に覆い被さってきた。
僕は激しく抵抗するも、力の強いその男に屈してしまい、抱かれてしまった。
「あれから大人になったお前を抱けて楽しかったよ。 今日はありがとな。」
僕は無言のまま俯いていた。そして思わず大きな涙が溢れ落ちた。
「泣いてるの? 仕方ないだろ? お前の女装が可愛いからだよ。 お前も女装なんかして本当は男に抱かれたいんだろ?」
僕は首を横に振った。
「じゃあ、どうして女装をしてる?」
僕は静かに口を開いた。
「女装は趣味なんです。でもそれは別の人格になりたいだけ‥。男に抱かれたいからじゃないから。」
「でも叔父さんにも抱かれたんだろ?」
言葉を詰まらせて、
「うん、それは‥。でも別に抱かれたいわけじゃないよ。女装を楽しんでるだけ。」
「わかんないな。女装を楽しむって男に抱かれるってことでしょ?」
「それもあるけど、もっと楽しいことがあると思うんです。」
「よくわかんないけど、また呼ぶからな。」
その男は僕を帰した。
「ありがとう。」
その男は僕に別れを告げると叔父さんを呼び、代金を払っていた。
彼らは僕にその代金を全額払うとタクシーで家まで帰らせた。