親友のケンタが鼻から血を流し、肩で息をしている。着ている学ランのボタンは全て外したまま。中には灰色のスェット。
今オレとケンタは喧嘩をしている。場所は学校の中庭。理由は…なんだっけ?オレの正拳突きはケンタの鼻をとらえたが、その前にローキックをもらっていた。左膝が熱い。
「てか何で喧嘩してるんだオレらは!?」
「んーわかんね!」
あ、じゃーもうやめようかとお互いフッと笑い構えを落とした時、いつの間にかギャラリーが囲んでいた。そいつらは男女関係なく、好奇な目でオレらを見ている。止めようとするやつはいない。どうせ大学受験のストレスを発散させたいんだろう。
空気を読むのが得意でノリがいいケンタは、素早く構え直しこちらを睨んできた。オイオイまじっすか。 左膝が震えだした。ケンタはテコンドー部元主将で、個人でインターハイに出たほどだ。オレも空手で県大会を優勝したことがある。こんなオレらが本気でやったらただじゃすまない…ていうかテコンドーって下半身への攻撃は反則じゃなかったっけ?なんてやつだ。まぁとにかく!なっ、ケンタ。もうやめよう。理由がないのにケンカだなんて馬鹿げている。僕達大人になろうじゃないか。
頬を緩ませ、目を細めながらケンタを見た。その時だった。
「キャー!ケンタ頑張ってぇ!!」
何ー!?叫んでいるのは我等がアイドルM、I、K、I、ミキちゃんじゃないのかい!?なぜ呼び捨てで!?まさかあいつらお付き合い…というよりお突き合いまでしてるのか!?ふざけんなケンタ!!オレとお前はど突き合いじゃー!! 「うぉぉぉぉぉ!!」
オレは叫びながらケンタめがけて走りだした。観客が湧いた。