私は…
私は、曖昧に整備された山道をふらふらと登り、つれなく迎えてくれるあの空気を愛した。
懐いてくれないグレーのあの猫を愛した。
けれど、私は彼を愛さなかった。
あれはもう愛などと言えるものではなかった。
あれは狂気だ。
二人とも狂っていた。
今になって思う。
私達は出会ってはならなかった。
唇をかさね、体をかさね、心を重ねる前に、どちらかが死ぬべきだった。
いまではもう遅いけれど…
すべては過ぎてしまったけれど…
私はこの心のまま眠ろう。あの日から逃げるために…
あんなもの…
いらない…………………