夏休みも終盤に差し掛かったある日の夕方ー。
あたしは、近くの公園のベンチに腰掛けていたー。
ブランコとシーソー、高さ2メートル位の滑り台しかない、何の変哲も無い質素な風景の、この公園も、あたしにとっては一番心が落ち着く場所だったー。
小さい頃からここへ来るのが大好きだったんだー。
母に叱られた時ー。
義理の父親に乱暴された時ー。
クラスメイトからイジメを受けた時ー。
辛い時、いつも一人で此処へ来てたんだー。
夏休みに入ってからは、毎日此処に来ていたー。
昼間は小さな子供達で賑やかな、この公園も、夕方になると人っ子一人居なくなるー。
そんな時間を見計らって、あたしは此処へ来ていたんだー。
あたしは絵を書くのが好きだったー。
風景画よりも、動植物、人物などをパステルで描くのが好きだったー。
この日もブランコに腰掛けて、絵を描いていたー。
そんなあたしの目に留まったあるモノー。
あたしの座っているブランコの横に小さな砂場があり、その砂場のコンクリートの仕切りの裂けた所から、懸命に這い出して来た一輪のタンポポー。
その姿に、
その生命力に、
その逞しさに、
あたしは小さな感動を覚えたー。
迷う事無く、あたしはその雄姿を描き始めたー。
強いね‥あんたー。
踏まれても‥
踏まれても‥‥。
這い上がって‥。
這い上がって‥‥。
ボロボロになっても‥。
クタクタになっても‥‥。
頑張って生きているんだねー。
あたしもこのタンポポの様に‥。
力強く生きていきたいー。
力強く生きて行くんだって‥。
そう思ったー。