『あれ?!木下じゃん?!』
突然あたしの背後から声がしたー。
どこかで聞き覚えのある声ー。
クルッと振り返ったあたしー。
『よっ!!』
そう言って片手を挙げ、ニコッと笑って立っていたのは‥。
同じクラスの、
北岡 聖人だったー。
『北岡君?!』
あたしはとっさにスケッチブックを隠したー。
『んー‥。たまたま通り掛かったら木下が居たからよ。木下こんな所で一人で何してるの?!』
北岡は、かなり明るめに染めた無造作ヘアーを手でくしゃくしゃしながら、言ったー。
『あ‥あたし?!
うん、あたしも北岡君と同じで、たまたま通り掛かって‥。』
ちょ‥。ちょっとわざとらしい言い方だったかも?!
な‥なんで北岡が此処に居んのよ‥。
『今、何か隠した?!』
内心焦っているあたしに気付く事無く、北岡が言ったー。
北岡の視線があたしの手元のスケッチブックに届いていたー。
『え‥。別に‥これは‥‥。』
言い掛けたあたしの手から、北岡はスケッチブックをサッと取り上げたー。
そして、あたしのスケッチブックを開いた北岡は、しばらくじっと見入っていたー。
あたしはその横顔を見て思ったー。
へぇ‥。我が校始まって以来のワルでクラスで恐れられている存在の北岡でも、こんな優しい顔をするんだー。
『これ‥。全部木下が描いたんだろ?!』
不意に北岡が口を開き、あたしの方へ視線を向けたから‥
あたしは一瞬ドキッとしたー。
『うん。あたし絵を描くのが好きなんだ。』
そう言って、あたしはブランコから下りて、あたしのスケッチブックを見ている北岡の横に並んだー。
北岡は背が高かったー。
同じ中1とは思えない程、大人びていたー。
身長は多分、この時既に180はあったんじゃないかなー。
変声期も終わってて、すっかり男性の声だったし、
何処から見ても高校生にしか見えなかったー。
北岡ってば黙ってたら格好いいのにもったいないねぇー。
北岡の横に立ちながら、あたしはそう思ったー。