翔吾が山口に帰る前日───
紗里と翔吾は二人で会っていた。
「紗里、手出して。」翔吾が手に何かを持っているようだった。
「どうしたの??」紗里がワケが分からず手を出すと手を裏返しにされ薬指に指輪をはめられた。
なにコレ──…??
「やるよ。そんなんだけど。」
それは翔吾がいつも指にはめていたゴムの黒い指輪だった。
「それ俺だと思って持ってて。なくすなよ。」
「ありがとう…」
紗里はこんなにうれしいプレゼントはないと思った。
ゴムのどこにでもありそうな指輪だったけど紗里には何よりも価値がある宝物に見えた。
その日紗里と翔吾は再度体を重ねた。
「──しょう…ご」
「なに…??」
「キスマ‐クつけて…」
「いいの??」
「ウン…お願いつけて」
首のあたりにピリッと少し痛みがはしった。
翔吾がいたという証がほしかった。
翔吾を愛していたという証がほしかった。
もうあたし達はこうやって体を重ねることも最後なんだから──…