「先生…。谷津木(ヤヅキ)舞って女が来たら…
ほんとのこと話してやってください。」
俺は目の前の無表情な担当医にそう言った。
「自分から話す気はないのか?」
「あいつ…たぶん信じないから。きっと半信半疑になるだろうし。俺がこの病院に通院してることは気付いてるみたいなんすけど。」
了解。っていうような表情を担当医が浮かべたのを見てから、病院を出た。
「明日こそは…伝えなきゃ」
毎日、学校で顔を会わせ、話をしてるにもかかわらず、まだ舞に病気のことを伝えられずにいる。
舞は、俺が言おうとする様子を察してか、俺にタイミングを与えてくれない。
「先生。俺、諦めてませんから。手術をしなくても、抗癌剤で治せるんですもんね!?」
なんで黙んだょ…。
「あなたが選んだ治療法だから、私たちは全力でサポートしますよ。」
また綺麗事かょ。
「手術は絶対にしない。ちゃんと自分で決めたんです!
……。
病気になったことに後悔なんて出来ない。
運命だから。
でも…」