冬の寒さは尋常ではなく、頬が痛い。
元々南の方の島にいたからか、それとも今年が寒いのか。
そんな事を考えていたら、同窓会の会場に着いたんだ。
私の名前は 滝 良次(25)故郷を離れて、もう4年間正月も帰っていない。
同窓会なんてなんのためにやるのかはわかってる。
あの過疎化が進んだ島に人を返そうと一部の俺の同級生が、考えついた苦策だろう。
なんで行くかって?
お袋に心配させてるからあの島に住んでる同級生様どもに元気でやってる事を伝えてもらう。
俺が電話でいくら大丈夫って言っても信じないから同級生を使うのだ。
居酒屋「麦の里」に着いてしばらく呑んでいたら、店名が違うのに気付いた。
しかも居酒屋じゃなくBARだった。
できるだけ平静を装って店を出た。
名前が全然違う。
BAR「狸」。
少し歩いた所にあり、
「締北小・中学校同窓会様」と、ホワイトボードに書かれてある。
カランと、ベルが鳴る扉を明けると、外まで聞こえた盛り上がりがピタッと止まった。
「えっと…」と女がしかめながら言う。
「滝…です」
「あぁ!!滝君!!」
ビールを手渡される。
ビール腹の男が乾杯の音頭をとるようだ。
「乾杯の前に、一つ言っておく事がある」
どうせ村に帰って来いとかだ。
必要無い情報だと脳が伝達し、けだるくなった。
「今日は6人来れないらしい。連絡があった。」
へえーはいはいそーですかー。
「うちの52期は俺を入れて23人だから残り17人がくる事になってる」
早くしろ。腕が痛い。
「でも、先生を入れて19人いるんだ。」
…え?
「先生の余興らしい。今日見つけられたら先生に言ってくれ、先生から5万円受け取ってくれ。」
…5万かよ。でもリアルにありがたいな。5万か。最近スロットですったからな。
よし、探そう。
さっきのビール腹が反応を待ってたかのように続ける。
「まずは自己紹介から、俺の名前は…皆覚えてるかな?滝 良次だよ。」
…ん?俺なのかよっ!!