If the miracle occurs

梨亜  2008-01-18投稿
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春の温かい日差しが、窓の外から差し込んでいる。
今日は、始業式。
高校二年生になる僕の名前は、月館類(つきだてるい)。
子どもの頃から、何かと行事のある前の日は眠れないという僕は、案の定、昨夜もなかなか眠れなかった。
別に楽しみにしているわけでもないのに。
かえって、なにもすることがなく、のんびりしていた春休みが恋しいくらいだ。
時刻は午前5時をまわった頃。
寝るのが遅かったわりに、すっかり目が覚めてしまった。
どうしようかと考えていると、やがて小さな物音が聞こえて来た。
僕は部屋から出て、音のする方へ向かった。
「あれ、類くん?」
そこに立っていたのは、亘理舞桜(わたりまお)さん。
僕の保護者であり、僕たちの通う雨森学園の英語教師でもある。
「早いですね、舞桜さん」
「まあ始業式だしね。教材室の整理もしておきたかったし。新しい教科書とか」
舞桜さんは少し苦笑いを浮かべて言った。
見ると、もう出る準備は万全なようだった。いくらなんでも早すぎると思うのだが。
「類くんはまた寝るの?」
「んー、目冴えちゃったんで、多分ないです」
舞桜さんは、そっか、と呟いた。
「じゃあ、あたしは行くけど。ご飯は作ってあるから、みんなで食べて。あ、ちゃんと起こしてあげてね♪」
やっぱり、もう行くのか。
舞桜さんは、身長は決して高くはない。その上見た目も性格もとても子どもっぽく、生徒にまじっていても、多分全然平気だと思う。
そんな舞桜さんも、こういうときはやけに年上に見えるんだよな。
僕はうなずいてから、舞桜さんを見送った。
「行ってきまーす♪」
舞桜さんは本当の子どものように、パタパタと出て行った。

さて、エレナを起こすにもまだ早い。
エレナというのは、僕と同じく、舞桜さんの家に居候している僕の妹分だ。
僕よりひとつ年下で、フランス人と日本人のハーフである。
フランス人の母親ゆずりの金髪碧眼を持つ、今日からは後輩ともなるエレナの名字は章姫(あきひめ)という。
この家の住人は、舞桜さんと僕、それからエレナ、ということになっているが、実はあと二人いる。
リィリアとヴィオード。
リィリアは僕、ヴィオードは舞桜さん、それぞれの人工精霊なのだ。
僕と舞桜さんは、魔法が使える。
にわかには信じがたいことだけれど、現実の話。



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