If the miracle occurs

梨亜  2008-01-18投稿
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今気付いたのだが、僕の隣の席は空席だった。
これは、もしかして…。
期待と不安が半々に沸いてくる中、またも教室の扉がガラガラと開いた。
「は〜い、席について〜。あれ、もうついてるね。まぁいいや」
担任である舞桜さんが、少し空気の読めていない雰囲気でいいながら、入ってきた。
舞桜さんは開き直って、また挨拶をした。
「今日から一年、みんなと一緒に七組で過ごす、担任の亘理舞桜です。去年も一緒だった人も何人かいるけど、よろしくね♪」
舞桜さんは辺りを見回しながら言い、僕の姿を見つけると、すかさずウィンクをした。
「じゃあ、早速自己紹介とか舞桜先生への質問タイム…といきたいところだけど、まずははじめに、転入生を紹介しまーす♪」
知らなかったクラスメイトたちがざわつく中、舞桜さんはパンパンと机を叩き「静かに!」と言った。
「んもぅ。じゃ、悠里亜ちゃん、カモーン♪」
女子だったのか。そうなると美空のいたずらは結構辛いものになると思うんだけど…。大丈夫だろうか。
僕は斜め前にいる美空の背中を軽くつつき、小声で言った。
「おい、女子みたいだぞ。平気なのか?」
「わかってるよ!もともとやってないって」
なら一安心。登校拒否にでもなられたらたまらないしな。
僕は向き直り、ゆっくりと開いて行くドアを見守った。
入ってきたのは、やっぱり女の子だった。それも、とびきり綺麗な。
サラサラした長い髪は、何も手を加えず、おろしている。長いまつげに、大きな瞳。とても色白で、舞桜さんほどではないものの、少し小柄だった。
誰もが言葉を失ったように、彼女を見つめた。
舞桜さんが黒板に、彼女の名前を書いているらしい音だけが、教室内に響いていた。
ー森宮悠里亜。
黒板には見慣れた舞桜さんの字で、そう書かれた。
それから転入生が、初めて口を開いた。
「森宮悠里亜(もりみやゆりあ)です。…よろしくお願いします」
あまりにも短すぎる自己紹介に、クラス中が黙りこくった。
沈黙を破ったのは、やっぱり舞桜さんだった。
「はい、じゃあいろいろわからないこともあるだろうから、みんな助けてあげてね。…席は、と」舞桜さんがわざとらしく教室を見回す。
「類くんの隣でいいや。ほら、あそこ……」
やっぱり、この空席はこういうことだったんだな。

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