転入生はつかつかと歩み寄り、静かに椅子を引き、静かに座った。
自己紹介やら質問タイムやらが終わり、クラスには明るい休み時間のにぎわいができていた。
「ふあ、すごい綺麗だよね。森宮さん」
美空がもう一度森宮さんを横目で見て、言った。
森宮さんと話そうとする人は、誰一人いなかった。
少し近寄りがたいというか、威厳を持っているんだよな。
「お前、話してこいよ。得意だろ、こういうの」
圭太が美空につっかけた。
「ざーんねん。あたし、こういうのは超苦手」
「丁度いいじゃないか。苦手を克服するチャンスだぞ。行け、美空!」
「人をペットみたく言わないでほしいなぁ」
圭太と美空の皮肉たっぷりな会話を聞きながら、僕は考えていた。
このままじゃ、だめだ。
もしかしたら緊張しているだけなのかもしれないし、とりあえずは話してみないとな。
僕はカタンと立ち上がり、彼女の机の前に立った。
「…………こんにちは?」
最初に口を開いたのは、驚くことに彼女だった。
しかし、なぜ疑問系なのだろう。
「…こんにちは」
結局なんて言えばいいのかわからず、そっくりそのまま返してしまった。
また、しばしの沈黙が流れる。
「ええと、月館類です…。隣の席のものです…」
今度は僕が口を開いた。が、とてもじゃないが会話が続かない。
しかも、なんかモゴモゴしてしまい、彼女に声が届いていたかどうかもわからない。
しかし、彼女はふと、クスリと笑った。
「気、つかってますか?」
「え!?ええと、その…」
森宮悠里亜は、にっこりと微笑んでいる。とんでもなく可愛い。
「いいんですよ。気にしないで。普通でいいですから」
「そうか?じゃあとりあえず、そっちも敬語はやめてくれ」
「はい…。じゃなくて、うん!!」
なんとなくちゃんとした会話になってきた気がする。
すると、美空と圭太も参加してきた。
お互いに軽く自己紹介をかわしてから、いつもは三人でする他愛もないことを、今日は四人で話した。
時は流れて、昼休み。
僕たちは四人で、屋上で昼食をとっていた。
ちなみに僕は、いつもどおり購買のお弁当である。
始めは互いに弁当のおかずを交換しあう僕たちに、悠里亜は違和感を感じていたようだが、次第に混ざってくるようにもなった。