唐突に意識が覚醒した。はっとして辺りを見渡すと机の足やら床が近く、どうやら自分は床の上で寝てしまったらしい。
やれやれと体を起こそうとすると、金属が擦れる音がしてそこから先に体を起こす事は叶わなくなった。
一体、どうしたんだ?
見てみると両足に厳重に鎖が絡まっており、それは床へと続いている。
「な、なな……なっ」
なんなんだ、一体。
言おうとした言葉は結局言えず、ただ引っかかった悲鳴の様な声が出ただけだった。
誘拐なのだろうか。それにしてはおかしい、ここは自分の家だ。
新しく買ったパイン材のパソコンデスクもイスもそこにあり、床も見慣れた海老茶色。ここが自分の家ではなかったら一体どこだと言うのだろうか。
体をひねりなんとか状況を確認しようとしたが、太股まである鎖がそれを許さなかった。
くそう、このままでは俺はっ……!
「けんちゃーん、ご飯よー」
階下から間伸びした母親の声によって、俺の本日『囚われごっこ』は終了した。