その夜近藤と土方の部屋、小さな火鉢の前で影を二つ揺らめかしながら、話こんでいるとそこへ入って行く影が一つ。
「どうだ?新八。」
「それが、」
新八は言葉を濁した。
「何も話さん・・・か?」
口元まで持っていった酒を止めて土方が聞いた。かえってくる答えがわかっていて、そのまま
くい
と流し込んだ。新八はとなりで頷いて、近藤からの酒を飲み干した。
「あんたの言う事の半分は当たってたよ。」
だがどうも
また飲んで、
「奴の仲間じゃぁなさそうだぜ。」
半分か、気に入らねぇな。
「そうかなぁ。」
酒を注ぎながら近藤が思い出すように言った。土方はその近藤を鼻で笑って、
「あんたは、女に弱えーよなぁ。」
近藤も笑っている。人を見抜く眼は土方には敵わないのを、前髪もとれない頃から知っている。
だが、いつもなら黙って土方の話を聴いているのに、今日はどうしたのか続けた。
「いやな、あの娘どうも見た限りじゃぁ、俺達と一緒でその化物に無理矢理連れて来られただけじゃねぇかな?」
くい
と飲んで、
「でなきゃぁ、あんなに真っ青んなったり、震えてたりしねぇだろ?化物の仲間じゃねぇよ。」
土方は黙って部屋の隅々に目をやった。何か、落ち着かない。
もしや、と思った瞬間
ぐら
と目の前が歪んだ。