身内
裏切り者
背けば脅威となる存在―\r
夕暮れ迫る校舎の中をゆっくりと歩きながら梅城ケンヤの思案は続いた
確かに、いざと言う時に背後からぶすりとやられたらたまったものではない
(居るとすれば教員連合か…)
半ば嘲笑を込めて、ケンヤは力を失ったかつての権力者達の集まりを脳裏に浮かべた
奴らに力はない
また連中のやっている工作などタカが知れている
(余りの姑息さに話にならないな)
だが―\r
ケンヤの上履きが渡り通路に差しかかった時、無視出来ない可能性に彼は気付いた
もし連中が生徒会にも触手を伸ばしていたとしたら?
昔の権威にしがみ付くだけの教師
ケンヤのカリスマの下一枚岩に見える生徒会
だが、もしも二つの要素が絡んだとしたら?
こいつは決して馬鹿には出来ない―\r
渡り通路の向こうにたどり付いたケンヤは、そのまま左に曲がり、会長室へと向かった
小さい可能性だ
だがどんな大事件でも、最初は誰も見向きもしない小さく些細な所から始まっているのも事実だ―\r
高級そうな木製ドアを開けながら、だがケンヤは今度は自分に失笑を向けた
(こいつは―俺もヤキが回ったか―考え過ぎにも程があるな)
会長室にはもう誰も居なかった
卓に置きっぱなしの鞄を手にとりながら、梅城ケンヤはふとある事を思い付いた
そうだ
あの二人だ
あの二人しかいない
あの二人をどうにかしないとな
さもないと俺は枕を高くして眠れない
この学校のためにも、何よりも俺の計画の遂行のためにも、あの二人の件を早めに処理しよう―\r
会長室の卓に直に尻を載せながら、暗闇の中にケンヤの目が鋭く光った
(港リリアと赤木マモル―君達は不服だろうが俺はやる―)