神崎の屋敷は思ったよりこじんまりしていた。と言っても普通の家とは比べものにはならない。引き取られた日、私は神崎の屋敷に連れてこられた。神崎は私に一通り屋敷の中を案内してまわったあと、『あなたの部屋です。』と言って30畳ほどの大きな部屋だった。
「ここ、ですか?」
「何か問題でも?」
「い、いえ。ただ・・・」
広すぎるなんて言えなかった。この男の機嫌をそこないたくなかった。
「ただ?」
「いえ、なんでもないです。」
神崎はただ私を見つめていた。私はいたたまれなくなって
「すみません。」
小さくつぶやいた。すると神崎は、
「あなたは、思っていることを口にだす癖をつけた方がいい。でないと、ストレスでおかしくなる。私は精神病の娘は欲しくは無いですから。」
にこりと微笑みながらスラスラと言う。それを聞きながらこれからの生活に不安を覚えた。