「伊勢屋のおだんご?嬉しい!ずっと食べてなかったからこの前夢にみたの」
「まったくあんたったら、あたしより団子に逢いたかったみたいなかおして」
ばれたか。
ホームにベルがなりひびいて、発車を知らせるアナウンスが無遠慮に会話をさえぎった。
「じゃあね。また来月あたりこられるだろうから。ちゃんとごはんは食べなさいよ」
言ったか言わないかのうちにドアがゆっくり閉じた。
久しぶりに逢えたのに。
口うるさい姉のこごとが、実は安心させてくれることに気が付いたのは、離れて暮らすようになってからだ。
ひとりホームに残されてみると、どうにも寂しくなった。
「末っ子は甘えん坊だから」という姉の声が聞こえそうだ。
「まったくしょうがないね」と 頭を撫でてくれる掌が懐かしく思えて、鼻の奥がツンとした。