「よっ!後は頼んだぜ剛。さすがに腹減っちまった」
手を出して待ち受けていた村山剛の大きな手のひらをパァンッ、と叩いて、さしものリンも疲れた様子だ。
「ああ、お前らは少し休め。 …‥おい、陳!弩(ど)の出番だ!」
「構え!…… 撃て!」
柵の前に並んでいた者たちが、陳の合図と共に一斉に矢を放つ。
「ウワァーッ!」
「何だコイツは!」
田島たちの悲鳴。
それと交差するように、肉を打つ重い音と骨の砕ける嫌な音が続いた。
「へん、手品にしては大がかりじゃねェか、そら!」
仲間が白虎の猛攻に血へどを吐くのも一顧だにせず、神一久は山際晋に凶刄をふるい続ける。
カィーンッ! と一際高い金属音が響くとともに、ズドンッ、と鈍い音がした。
神一久は、へし折れたナイフを手にしたまま、口と鼻から血を吹き出している。
晋が手加減なしで【発勁(はっけい)】を人体にふるうのは、村山剛との最後の戦い以来であった。
「ほう、やっぱり来たか、少林派の化け物が」
「… 殺す」
村山剛の前に立った劉源治は、血潮にまみれた顔を怒りに燃え立たせていた。
「貴様が形意門の虎か。
… いくぞっ!」
劉源治の怒号には答えず、村山剛は柔軟な動きを見せはじめる。