「14番」

ゆーか  2008-01-20投稿
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ここは、何処にでもある公立高校のバスケ部。その高校は、いわいる古豪といわれる部で、何十年か前まで全国の常連校だった。
これは、マネージャーの私と万年補欠だった一人の少年の何でもない話。
彼は、練習熱心だったけど、「試合に出場したことは、中学生の時から一度もない」と、笑いながら言った。そして「全国大会へ行く」と言うのが、口癖だった。そんな彼は他の部員達から、浮いた存在だった。
「試合にも出れないくせに」とか言う人もいたけど、決して諦めない姿勢に、私はいつしか彼に、恋心を抱くようになった…。
試合に出るところか、ベンチにも入れない彼は、誰よりも大きな声で仲間に声援を送り続ける日々。
三年生になる手前で私は、「後輩が試合に出てるのに悔しくないの?何故、そんなに頑張れるの?」と聞いて、すぐに後悔してしまった。彼は、少し微笑んで「ただ、このチームで、全国に行きたいんだよ…」と言う。
そんな、彼の顔を見て後悔の念からか、泣きながら謝る私に、「別に、ベンチ入りもスタメンも…もちろん全国も、まだまだ諦めてないよ!かっこ悪く頑張るから、見ててよ」と言って練習に行った。…そして、最後の夏。ベンチ入り発表の日に彼の名前が、呼ばれた。貰ったユニホームは、「14番」…決して派手な番号でもないけど、彼の嬉しそうな顔は、忘れられない。
「おめでとう」と言うと「まだまだ!試合に出ないとな」と笑って言う。
そして、県大会が始まる。
順調にチームは勝ち進んでいたけでど、彼が試合にでる事はなく、準々決勝の試合、後半ラスト6分…28点差で負けている場面で、ついに「14番」が出てくる。逆転の見込みは、絶望的…顧問の先生の心使いかもしれない…
彼の初めての試合…
でも私には、その「14番」は、輝いて見えた。
結局、試合は負けてしまった。
その時に初めて見る彼の涙…
嬉し泣きだったのか…悔し泣きだったのか…
あれから22年が経った。その彼と、結婚して幸せな日々を過ごしてる。
中学生になる、息子が今、バスケをしている。得意げに、「初めてユニホームを貰ったよ」って見せてきたのが「14番」だった。

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