『暗くなったら花火やろうぜ。』
そう言って、北岡は両手いっぱいの花火をあたしに見せたー。
『もう、後5日で夏休みも終わりじゃん?!夏休み最後の思い出によ?!』
北岡はそう言うと、昨日と同じく、あたしの隣のブランコに腰を掛けたー。
『北岡君。どうしたの?!花火なんて!!』
そう言ったあたしの声は、自分でも分かる位、弾んでいたー。
まさか今日は北岡が来る筈が無いと思っていたけど、会いたいと思っていたからー
その思いが通じたかの様な北岡の登場に、あたしは嬉しさを隠せなかったー。
『花火なんて何年ぶりかな‥‥。』
あたしは一言呟いていたー。
* * * * * *
夕日もすっかり沈み始めるとー
あたし達は、こんな会話で盛り上がったっけー。
『木下知ってるか?!ロケット花火の戦争ごっこ。』
『ロケット花火の戦争ごっこ???』
『そ。これは海辺の砂浜でしか出来ないんだけどな。』
『え〜?!どうやるの?!どうやるの?!』
『遊び方は至って簡単。2チームに分かれて、砂山にロケット花火を突き刺し、相手チームに向かってぶっ放す‥!!
これだけさ‥。』
『何それ〜?!危ないじゃん!!』
『ま‥ね。でもよ、これがまた面白いんだよな。2連射、3連射なんて序の口よ。単純明確な遊びだろ?!』
『あたしは絶対やりたくなぁ〜い!!』
『まぁ‥。女の子には向かない遊びだよな。』
『あはは。』
勿論、北岡はロケット花火なんか持って来なかったけどー。
あたしに話してくれた『ロケット花火の戦争ごっこ。』
の話をしている時の北岡の目が、とても楽しそうだった事ー。
楽しそうに、ずっとあたしの目を見て話し続けてくれた事ー。
そんな些細な小さな事が、その時のあたしには、凄く嬉しかったんだー。