なぜか私は和の言葉に敏感になってしまっていた
「私もあのとき本屋さんに行かなければ今日のこの時間はないんだよね
すごいね」
たわいもない話をしていると飲み物と前菜が運ばれてきた
『じゃあ、乾杯しよう』
チンッ
グラスが奏でた音がやけに大人ムードをかきたてた
次々に料理が運ばれてきた
和はナイフとフォーク、そしてお箸を交互に上手く使っていた
私も小さい頃から母に食事作法は厳しく仕付られていたおかげで和の前で恥をかかずに済んだ
このとき改めて母に感謝した
和がワインを頼んだ
一杯
また一杯
少し和の頬がりんごになっていた
かずのことをもっと知りたいと思っていた私はほろ酔い気分のかずをみて勇気を出して質問した
「和さんは彼女とかいないの?」
いて当たり前と思ってはいたがいないという言葉を待っていた
『いると思う?いないと思う?』
和の答えに腹が立った
私の気持ちを見抜かれているような気がした
私が「まさか・・結婚してたりして・・」
そう言うと和は笑いながら
『結婚どころか彼女もいないよ。あ、好きな人はいるけどね』
「・・・。」
好きな人がいるのになぜ私と食事をするの?私はショックを受けたのか、言葉に詰まってしまった