奈央と出会えたから。<54>

麻呂  2008-01-21投稿
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『北岡君。線香花火やっていい?!』



そう言ったあたしの横で、北岡が、



『おう。』



と返事をしたー。



花火の点火用に立てた一本のローソクに二人で同時に線香花火を近づけたー。




ーパチ‥パチパチ‥パチパチパチパチ‥‥ー




勢い良く弾ける二つの線香花火ー。




ーパチパチパチパチ‥‥パチパチ‥パチ‥ー




最初は勢い良く弾けていた花火が、次第にその勢いが弱まって行くー。



『北岡君‥。あたしの、もう終わっちゃうよぉ‥。』



あたしがそう言い終わらない内にー



北岡はとっさにあたしの線香花火に、
自分の線香花火をくっ付けたー。



あたしと北岡の線香花火が合体したー。


『ほら‥。一度消え掛かった花火が‥
また勢いづいてきたぜ?!』



北岡とあたしの線香花火は、勢い良く火花を飛ばしたかと思うとー



遂には燃え尽きたー。



『線香花火ってなんか悲しいな‥。』



ぼそっと北岡が呟いたー。



『うん‥。』



あたしも頷くー。



『木下‥。お前さー。』



『えっ?!』



何かを言い掛けた北岡に、あたしは問い返したー。



『‥強いのなー。』


北岡があたしに言ったこの一言は、



一体どういう意味だったんだろうー。



あたしは決して強くなんかないー。



そう言ってやりたかったけどー。



何故か言えなかったー。



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