『北岡君。線香花火やっていい?!』
そう言ったあたしの横で、北岡が、
『おう。』
と返事をしたー。
花火の点火用に立てた一本のローソクに二人で同時に線香花火を近づけたー。
ーパチ‥パチパチ‥パチパチパチパチ‥‥ー
勢い良く弾ける二つの線香花火ー。
ーパチパチパチパチ‥‥パチパチ‥パチ‥ー
最初は勢い良く弾けていた花火が、次第にその勢いが弱まって行くー。
『北岡君‥。あたしの、もう終わっちゃうよぉ‥。』
あたしがそう言い終わらない内にー
北岡はとっさにあたしの線香花火に、
自分の線香花火をくっ付けたー。
あたしと北岡の線香花火が合体したー。
『ほら‥。一度消え掛かった花火が‥
また勢いづいてきたぜ?!』
北岡とあたしの線香花火は、勢い良く火花を飛ばしたかと思うとー
遂には燃え尽きたー。
『線香花火ってなんか悲しいな‥。』
ぼそっと北岡が呟いたー。
『うん‥。』
あたしも頷くー。
『木下‥。お前さー。』
『えっ?!』
何かを言い掛けた北岡に、あたしは問い返したー。
『‥強いのなー。』
北岡があたしに言ったこの一言は、
一体どういう意味だったんだろうー。
あたしは決して強くなんかないー。
そう言ってやりたかったけどー。
何故か言えなかったー。